CBNホイールとは?CBNホイールの種類と特徴、加工事例まとめ

2023/05/25 コラム

CBNは、立方晶窒化ホウ素(cubic Bron Nitride)の頭文字をとった化合物で、ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇ります。そのCBNを使った、高効率・高寿命の超砥粒ホイールが「CBNホイール」です。
近年では、航空宇宙産業向けの耐熱合金や、金型向けのハイス鋼の研削ニーズの高まりで、CBNホイールの需要も増加しています。
このコラムでは、材料によるダイヤモンドホイール・CBNホイールの使い分けや、CBNホイールの種類、その加工事例についてご紹介します。

超砥粒ホイール(ダイヤモンド・CBN)について

超砥粒ホイール(ダイヤモンド・CBN)について

研削砥石とは、高速に回転させて砥石に含まれる砥粒と呼ばれる硬質の細かい粒を多数の切れ刃にして加工する回転工具です。加工物を削って加工物を除去する工具になり、一般的な切削回転工具と比べて切れ刃の数が非常に多くランダムに切れ刃が配置されているため、良好な仕上げ面が得やすく工具寿命が長く精度の高い加工に向いた工具になります。
また、砥粒層と呼ばれる砥粒が含まれる一定の厚みの層があるため、工具摩耗が進展していっても砥粒層の厚み分は継続して使用できるのが回転切削工具とは異なる工具になります。
研削砥石には、SiC(炭化ケイ素)やアルミナなどの砥粒を使った「一般砥石」と、ダイヤモンドやCBNの砥粒を使った「超砥粒ホイール」があり、主に研削盤をはじめ、研磨機や自動機などの機械に装着して使われます。
(一般的に「ホイール」と呼ぶときには、超砥粒ホイールを指します)

超砥粒ホイールは一般砥石とくらべ高価ですが、工具寿命や精度の点でメリットがあり、用途によって使い分けることが、生産性向上のポイントとなります。

「ダイヤモンドホイール」と「CBNホイール」との使い分け

「ダイヤモンドホイール」と「CBNホイール」との使い分け

超砥粒ホイールには、ダイヤモンドを使った「ダイヤモンドホイール」と、CBNを使った「CBNホイール」があります。
ダイヤモンドホイールは、炭素原子が共有結合した”地球上で最も硬い”材質で、一般砥石では研削が難しい「硬質材料」の研削に使われます。ただダイヤモンドは、熱安定性が低く、鉄と化学的に反応し摩耗が進行する性質があるため、鉄系材料の研削には向いていません。そこで使われるのが、CBNホイールです。

CBNは、立方晶窒化ホウ素(cubic Bron Nitride)の頭文字をとった化合物で、ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇ります。ダイヤモンドとくらべ熱安定性が高く鉄と反応しにくいため、鉄系材料の研削に向いています。

cBN:
ホウ素と窒素からなる組成が最も単純なIII-V族化合物である立方晶窒化ホウ素(cBN)は、天然に産しない人工物質であり、ダイヤモンドと類似の結晶構造を持ちます。

引用元: 発光材料研究の新展開|独立行政法人 物質・材料研究機構

材料によるダイヤモンド・CBNの使い分け

一般的に、非鉄金属には「ダイヤモンドホイール」、鉄系金属には「CBNホイール」が使われます。
CBNはダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち一般砥粒と比べて硬度が高く摩耗が少ないため、ダイヤモンドが苦手とする鉄系材料の効率的な加工に向いています。一般的にはCBNの方がダイヤモンドより高価なため、ダイヤモンドで加工可能な領域では基本的にダイヤモンドが使用されます。
また、#40より粗い砥粒を使用するような加工領域でもCBNは一般的ではなくダイヤモンドが使用されます。逆に細かな砥粒を使用する領域でもCBNはあまり使用されず、#400より細かいミクロンサイズと呼ばれる微粒のCBNが使用されるのは稀で多くありません。

ダイヤモンドホイールに向く材料 ダイヤモンド/CBNホイールに向く材料 CBNホイールに向く材料
  • 超硬合金
  • サーメット
  • セラミックス
  • 石英、ガラス
  • シリコン
  • フェライト、サマコバ磁石
  • 石材、耐火物、タイル
  • PCD、PCBN
  • 化合物半導体材料
  • FRP、CFRP、カーボン
  • 一般砥石 ...など
  • 溶射金属
  • 鋳鉄
  • タングステン
  • ネオジム磁石
  • 耐熱合金
  • チタン合金 ...など
  • 炭素鋼
  • 高速度鋼(ハイス)
  • 工具鋼
  • ダイス鋼
  • ステンレス鋼
  • 合金鋼
  • 軸受鋼
  • 焼結金属
  • センダスト
  • アルニコ磁石 ...など

CBNホイールと一般砥石との違いは?

CBNホイールと一般砥石との違いは?

CBNホイールで研削できる材料の多くは、一般砥石でも研削できますが、加工効率や工具寿命の観点から、一般砥石からCBNホイールに置き換えらるケースが多くあります。
研削ホイールの加工精度は、工作機械自体の精度に依存しますが、摩耗に強いCBNホイールを使うことで、精度が出しやすいメリットもあります。

CBNホイールと一般砥石との比較

CBNホイール 一般砥石
寿命 摩耗に強く長い 摩耗に弱く短い
単価 高コスト 低コスト
精度 精度が出しやすい 精度が出しにくい

◎CBNホイール選定のポイント

  • 単価が高いCBNホイールですが、寿命の長さと砥石交換回数の削減によって、ランニングコストを大きく下げることができます
  • CBNホイールは一般砥石と比べて加工途中での工具摩耗が少ないため、精度要求が厳しい加工でも高精度な加工が期待できます
  • CBNホイールは工具摩耗が少ないため、精度要求が厳しい量産品の加工で、摩耗した工具寸法を補正する回数を削減できます
  • 使用済みの一般砥石は産業廃棄物となってしまうため、より高寿命のCBNホイールに置き換えることで、処理コストの削減や、SDGs(目標12「つくる責任 つかう責任」)達成への取り組みにつなげることができます

CBNホイールの種類と特徴

CBNホイールの種類は、使用されるボンドによって大きく4種類に分けられます。

CBNビトリファイドボンドホイール

CBNビトリファイドボンドホイールは、砥粒をガラス質(無機材料)の結合剤で固めたホイールです。
硬くて脆い特性で、高負荷条件下での切れ味・自生発刃性に優れます。有気孔構造を得やすく切りくずの排出性に優れ、成形ツルーイングが比較的容易です。

CBNレジンボンドホイール

CBNレジンボンドホイールは、砥粒をレジン(熱硬化性樹脂)の結合剤で固めたホイールです。
高い切れ味で、鏡面などの高品位加工に最適です。汎用性が高く、多くの被削材、研削方法に適用が可能です。ツルーイング・ドレッシングが比較的容易です。そのため使い勝手が比較的よいボンドになります。

CBNメタルボンドホイール

CBNメタルボンドホイールは、厳格な温度・雰囲気管理のもと、砥粒を金属粉で焼結し固めたホイールです。
砥粒の保持力が高く、放熱性・耐熱性・耐摩耗性に優れます。形状維持性がレジンボンドなどと比較して高いため、総形加工に向いています。

CBN電着ホイール

CBN電着ホイールは、CBN砥粒を金属台金ベースの表面にメッキで固着させた砥石です。
他ボンドと違い切れ刃は一層のみのため他ボンドより寿命は短くなりますが、高い切れ味を持ち、他ボンドより比較的安価・短納期で製作ができるのが特徴です。砥粒突き出しが他ボンドと比較して大きいため、高い切れ味を発揮します。複雑な形状が他ボンドと比較して容易に製作できるため、複雑な総形形状加工に向いています。メッキ層を剥離して再度砥粒を電着する再電着が可能です。

CBNホイールによる加工事例

東京ダイヤモンド工具製作所では、各種ダイヤモンド工具の製造から、複雑な形状の総形ホイールのカスタマイズまで、研削加工の高能率加工を実現する研削工具を幅広くラインナップしています。
その中から、CBNホイール(レジンボンド・メタルボンド・電着)による加工事例をご紹介します。

CBNホイールによる機械部品の加工

CBNホイールによる、ニードルベアリングの加工

CBNホイールによる、ニードルベアリングの加工

CBNレジンセンタレスホイールで、硬度の高いニードルベアリングの"ころ"の長時間加工が実現。ホイールの粒度・仕様のバランスを調整することで、研削持続性と仕上がり精度が両立します。

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CBNホイールによる、ピストンリングの合口加工

CBNホイールによる、ピストンリングの合口加工

CBN電着ホイールで、表面処理が施されたスチール製ピストンリングの高能率加工が実現。さらに高い形状維持性を誇る「DEX Duo 複合電着ホイール」では、従来の電着ホイールとくらべ、形状崩れを約1/3に抑制することができます。

◎製品紹介はこちら

CBNホイールによる、ばねの端面・内面取り加工

CBNホイールによる、ばねの端面・内面取り加工

高寿命のCBN電着ホイールで、太い線径のばね端面の加工時間短縮が実現。高い形状維持性で、ばねの内面取り加工にも最適です。

CBNホイールによる、コレットチャックのすり割り加工

CBNホイールによる、コレットチャックのすり割り加工

CBNレジンホイールで、コレットチャックのすり割り加工が実現。形状維持性が高く、精度維持した安定した加工が可能です。

CBNホイールによるネオジム磁石の加工

CBNホイールによる、ネオジム磁石の切断・内径・端面加工

CBNホイールによる、ネオジム磁石の切断・内径・端面加工

CBNレジンボンドホイールで、ネオジム磁石の高能率加工が実現。砥粒を最適化することで、ワークのチッピングを低減するとともに、適度な自生発刃性で、切れ味が持続します。

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CBNホイールによる金型加工

CBNホイールによる、平面研削盤・成形研削盤での研削

CBNホイールによる、平面研削盤・成形研削盤での研削

CBNレジンホイールで、精度の高い金型の平面加工・溝入れ・成形加工が実現。

CBNホイールによる、プロファイル研削盤での研削

CBNホイールによる、プロファイル研削盤での研削

CBNメタルホイールで、微細な金型やパンチ・ダイスの高精度加工が実現。

CBNホイールによる、治具研削盤での研削

CBNホイールによる、治具研削盤での研削

CBN電着ホイールで、精度の高い精密金型の内面研削や穴加工が実現。

CBNホイールによる工具・刃物の加工

CBNホイールによる、工具素材の加工

CBNホイールによる、工具素材の加工

CBNレジンセンタレスホイールで、丸棒工具素材(ハイス鋼)の高寿命で高効率な外形研削が実現。

CBNホイールによる、ハイス工具の加工

CBNホイールによる、ハイス工具の加工

CBNメタルボンドホイールで、ハイス工具の安定的な研削加工が実現。砥粒の自生発刃作用をコントロールすることで、研削焼け・うねりのほとんどない、良好な研削面を形成します。

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CBNホイールによる、鋸の目立て

CBNホイールによる、鋸の目立て

CBNメタルボンドホイールで、木工加工などに使用される鋸の目立てが実現。形状維持性が高く、高寿命なので、替え刃式の自動機でも連続使用が可能です。

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CBNホイールによる、工業用刃物の加工

CBNホイールによる、工業用刃物の加工

CBNレジンホイールで、段ボール・印刷物などの切断刃やスリッターの刃付け加工が実現。寿命が長く、裁断機などの長い刃物や面積の大きな刃物でも、連続して加工することができます。

CBNホイールとは?まとめ

東京ダイヤモンド工具製作所では、各種ダイヤモンド工具をはじめ、CBNレジンボンドホイール・CBNメタルボンドホイール・CBN電着ホイールなど、ワーク材質や加工内容にあわせて、最適な研削ホイールをご提案します。ホイールひとつから受注生産も可能です。
加工相談からCBNホイールの選定、複雑な形状の総形ホイールのカスタマイズまで、ぜひ一度東京ダイヤモンド工具製作所までお問い合わせください。