人工関節加工に求められる高精度加工|加工のポイントを解説

2025/08/20 コラム

近年、関節の治療で使われる人工膝などのインプラント需要は大きく増えています。こうした医療機器の加工には、非常に高い精度ときれいな表面、そして長く使える耐摩耗性が求められます。そのため、加工に使う研削工具にも特別な性能が必要です。
当社は、このような医療分野の難しい材料の加工に対応するため、独自の砥石技術を開発してきました。
今ではその切れ味と安定性が評価され、工具研削だけでなく、光学や半導体、医療の分野でも幅広く使われています。

人工膝部品に使われる材料と加工の難しさと加工のポイント

人工膝部品に使われる材料と加工の難しさと加工のポイント

人工膝の金属部品には、コバルトクロム合金(Co-Cr)やチタン合金など、体にやさしくさびにくい素材が使われます。これらは硬く、加工時の抵抗も大きいため、一般的な砥石では削るのが難しい素材です。
特にCo-Cr合金は熱がこもりやすく、加工中に砥石の性能が落ちやすい特徴があります。そのため「切れ味」「熱をためない」「形を保つ」というバランスがとても大事になります。

人工膝(TKA)は、大腿骨コンポーネント、脛骨コンポーネント、膝蓋骨コンポーネントの3つの部品からできています。
それぞれで材料も加工法も違い、必要な精度や表面の仕上がりも変わってきます。

部位ごとの特徴と加工の難しさ

部位 材料 加工の難易度 主な加工法
大腿骨コンポーネント
(Femoral)
Co-Cr合金、チタン合金 とても高い
(曲面が多く、滑らかさが必要)
5軸マシニング
CNC研削
電解研磨
脛骨トレイ
(Tibial Tray)
Co-Cr合金、チタン合金 高い
(高い平面度と安定性が必要)
CNCフライス
ワイヤ放電加工
脛骨インサート
(Tibial Insert)
UHMWPE 中程度
(摩耗に強く、なめらかな曲面が必要)
旋盤+バリ取り
低速切削
バフ仕上げ
膝蓋骨部品
(Patellar)
UHMWPE やや低め
(小型で耐衝撃性が必要)
高精度旋盤
ダイヤモンドバイト切削

使用される加工設備の例

設備 主な用途 加工内容
5軸マシニングセンタ 大腿骨コンポーネントの複雑曲面加工 曲面の切削、粗加工から仕上げまで
CNC研削盤 高精度な金属部品の仕上げ 面粗さの改善、寸法精度の確保
ワイヤ放電加工機 脛骨トレイなどの精密形状加工 微細形状や高硬度材料の加工
高精度旋盤 PE部品の切削加工 円形部品の加工、寸法安定性の確保
電解研磨装置 金属部品の鏡面仕上げ 表面の微細凹凸を除去し光沢を付与
バフ仕上げ機 UHMWPE部品の表面仕上げ 滑らかな曲面形成、摩擦低減

加工のポイント

1. 大腿骨コンポーネント

課題 関節の運動時に滑らかに動く必要があるため、球面・楕円面の精度と表面粗さ(Ra<0.05μm)が極めて重要です。
対策 多軸マシニング(5軸)による曲面同時加工で切削します。
仕上げはバフ+電解研磨で鏡面に仕上げることがポイントです。

2. 脛骨トレイ

課題 PEインサートを正確に嵌合させる必要があり、嵌合部分の公差管理(例:±10μm)が厳しいことが課題です。
対策 ワイヤ放電加工(EDM)でシャープな角や溝を形成します。
組立治具で試組チェックすることがポイントです。

3.脛骨インサート、膝蓋骨(ポリエチレン製部品)

課題 熱変形しやすく、工具の摩耗粉が表面に残留すると摩耗原因になります。
対策 冷却液を用いずエアブロー+低温で加工します。
超仕上げバイト(ダイヤモンドバイト)を使うことがポイントです。

加工を助ける超砥粒工具の役割

加工を助ける超砥粒工具の役割

こうした硬くて加工が難しい材料には、超砥粒工具が欠かせません。代表的なのは CBN砥石ダイヤモンド砥石 です。

  • CBN砥石:鉄系やCo系合金の加工に強く、寿命が長く、形を保ちやすい
  • ダイヤモンド砥石:チタンやセラミックに適しており、鏡面仕上げにも対応


ただし、医療部品の加工では「高い切れ味」と「安定した精度」の両方が求められます。従来の砥石では、切れ味は良くても寿命が短かったり、寿命は長くても熱が発生しやすかったりと、一長一短がありました。
この課題を解決するために当社が開発したのが、ダイヤモンドホイール『メタレックス』シリーズです。

医療向け難削材の加工に最適な「メタレックス」シリーズ

「メタレックス」は、レジンボンドの切れ味とメタルボンドの長寿命を両立させたダイヤモンド砥石です。

〈メタレックスの特長〉

  • 切れ味がよく、加工にすぐ応答できる
  • 加工熱をおさえて焼けを防ぎやすい
  • 高精度な形を長く安定して保てる
医療向け難削材の加工に最適な「メタレックス」シリーズ


実際に医療機器メーカーからは「加工能率が上がった」「仕上げ面の粗さが安定した」と高い評価をいただいています。
さらに、用途や条件に合わせて結合度を選べるよう、多彩なラインナップをそろえています。

◎製品の詳細はこちら

医療品質を支えるパートナーとして

人工関節の加工では、今後もさらに高精度・高効率が求められます。当社は、現場の声を取り入れながら砥石構造の改良や特殊形状への対応、カスタム開発に取り組んでいます。
これからも医療分野のものづくりを支えるパートナーとして、信頼される製品づくりを続けてまいります。